第15回 日本認知症ケア学会大会
~認知症ケアパスの一担い手として~

目的

認知症の介護現場では、陽性BPSDを伴った患者の対応に苦慮している。そこで、当施設では、そのような困っている陽性BPSD患者の症状を軽くし、本人のQOLの向上と家族の介護負担を軽減するために、認知症棟ショートスティ(SS)で少量薬物療法を試み、BPSDを軽減させ、より多くの利用者がSS可能となるかを検討した。また、これにより認知症にまつわる諸問題の解決の一助となるかを検討した。

方法

平成24年4月から平成25年3月までに、BPSDを伴って認知症棟SSを利用し、少量薬物療法を受けた患者の各月におけるSS人数の推移とSS滞在日数の推移を調べた。さらに、少量薬物療法を導入する際の医師・看護師・介護士における問題点を検討した。また、平成24年4月から平成25年10月までに入所したBPSD患者は27例で、疾病の内訳と結果を調べた。

結果および考察

各月における薬物療法を受けたSS者数の推移では、平成24年4月5月の初期では、少量薬物療法になれていないため4名程度であったが、平成25年2月と3月には9名と10名と初期より2.5倍と増えた。さらに、薬物療法1人あたりの月平均滞在日数では、初期は同様、4~5日と短かったが、平成25年3月は12.1日と約2.5倍まで長く滞在させることができた。これにより少量薬物療法を習得すればBPSD患者であっても、SSの入所者数や1回の滞在日数を増やすことが可能になった。他の介護施設のSSより長く、そして月に何回でもSSさせることができるようになり、家族に大変喜ばれている。これによってBPSDを伴う認知症患者の場合は、少量薬物療法が可能な老健SSを使い、BPSDがないか、または軽い場合は従来の介護系のSSを使い分けることができるようになれば、認知症ケアの流れを変えられる可能性が出てきた。次に老健SSで少量薬物療法を施行した場合の利点としては、施設側からすると現場の介護士が疲弊しない、他の入所者に迷惑がかからないなどが挙げられる。患者家族側からすると、家族の精神的負担の軽減になる。また、少量薬物療法を導入する際の医師、看護師、介護士における問題点としては、施設長がBPSDの薬物療法に慣れていない、看護師や介護士の認知症やBPSDに対する対応力不足が挙げられた。そして、平成24年4月より平成25年10月までの1年7ヶ月の間にBPSDを認めSSを利用した症例は27例であった。アルツハイマー型認知症16例、脳血管型認知症8例、レビー小体型認知症2例、前頭葉側頭葉変性症1例であった。
結果は、改善15例、やや改善6例。変化なし3例(11%)、そして、悪化3例(11%)であった。BPSDに対する少量薬物療法を成功させるには、薬剤で70%、介護力で30%抑えていくことである。薬剤の増量は少しずつ行うことで、決して効果を急いではいけない。BPSD患者を100%介護ケアだけで看るのも不可能であり、反対に100%薬剤を使って医療でコントロールするのも危険である。これらの問題を解決するには医療の目と介護の目が両方備わっていなければならない。そして、これら老健の認知棟が認知症をケアするには最適の施設である。今後、増々、増加してくる認知症患者への対策として、少量薬物療法施行可能な老健SSは頼られる施設として、これからの認知症ケアの中核的存在になると実感した。以上のことを踏まえて新しい認知症ケアパスを作成したので、スライドで説明する。