第24回 全国老健大会(金沢)

1.最初に

当法人は、デイケア、デイサービス(2施設)、入所施設、医療型療養病床、障害者施設を所有する法人である。そのうち、ここで述べる入所施設(萩の里)は、2階に58名の入所一般棟、3階に42名の認知症棟がある。
萩の里は、2階には、現在、介護職員18名で、うち正社員が15名(3人は今年度入社)、非常勤(パート)が3名で、利用者様のケアにあたっている。

2.マニュアル作成の目的

萩の里は、開設13年目の施設であるが、新人職員にとって、萩の里独自の介護や業務、施設設備に対しての統一された教育マニュアルというものがないため、以下のような問題点が取り上げられていた。
1)シフトの関係で同じ職員が教えることが難しく、日によって教える職員が変わる
2)職員によって、業務の教え方、教える内容にばらつきがあり新人職員が戸惑ってしまう
3)教えた職員間で、新人職員の理解度を共有できない、また、共有するためのマニュアルがない
以上の問題点を改善するために、統一された「施設独自のマニュアル」を作成する経緯に至った。

3.改善手順

1)~3)の問題点について各々の改善手順を示す。
1)について
シフトの関係上、教える先輩職員が必ずしも同じというわけにはいかないため、誰が新人職員に教えても同じ内容を教えられるようにするために、教える内容を統一する「施設独自のマニュアル」を作成する
2)について
経験年数、介護系学校の卒業や資格の有無、個人の考え方の違いから、先輩職員の間でも能力の個人差が生じてしまい、業務・介助を行う際にも、「なぜそれを行うのか」という理由をしっかりと説明できるかどうかも問題となっていた。そのため、まず業務改善を試みた。従来の業務のやり方を洗い出し、改善することが可能な業務については、現場の主任と話し合い、業務内容の変更を行った。そして、業務の変更を含め、従来の業務内容の内容・知識・技術統一化を図るために職員に新たに業務内容マニュアルを作成し、配布する。このマニュアルを統一事項とすることで、どの先輩職員が新人職員についても、教える内容が同じとなるようにする。
3)について
新人職員日報の様式を変更することにする。新人職員日報に業務ごとのメモ帳を入れ、新人職員が各自メモを取ったものをメモ帳に記入させることにする。それにより、新人職員がどこまで終わったのか、理解したのかを一目見ればわかるようにする。先輩職員は、このメモ帳を見て、不足部分を補えば良い形となり、新人職員に確認する手間が省ける。また、指導者コメント欄に翌日指導者への申し送り(依頼・確認等)欄を追加することで、前日指導者から、翌日指導者への申し送りをスムーズにできるようにする。

4.なぜ施設独自のマニュアルなのか

マニュアル作成にあたり、「施設独自のマニュアル」を作成する事にした。なぜ、「施設独自のマニュアル」なのか。学校で教えているテキスト本に載っている内容を統一事項として、浸透させれば良いのではないかという考え方もあった。しかし、テキスト本では網羅しきれない部分がある。また、テキスト本に載っている内容の寄せ集めでは、複数の見解により内容に違いが生じてしまう。そのため、施設独自のマニュアルを作成することで、施設のやり方に沿った決め事ができると考えた。施設独自に行っていることでも、なぜそれを行うか」を理由付けて明確化することで、例え他の施設の職員や、研修にきた学生に質問されたとしても、全職員の見識の違いなく答えることができる。「なんとなく」や「わからない」や「職員によって回答が違う」などの回答をしてしまうと、施設には、明確な答えがないと捉えられてしまう。当施設で独自に行っていることでも、当施設に所属している職員はそれが正しいと思い、日々の業務・介助に携わっている。それならば、それを誰に指摘されても正しいといえる理由が必要である。そのためにも、「施設独自のマニュアル」を作成しなければならないという結論に至った。マニュアル作成を行う段階で、他職種のリハビリスタッフ等に協力を求めた。例えば、先輩職員が新人職員にトランスを教えたとする。その場合、先輩職員の経験年数、介護系学校の卒業や資格の有無、個人の考え方の違いから教える内容に違いが生まれ、さらに、専門職ではないため、教える内容に不足が生じてしまう可能性もある。そのため専門職であるリハビリスタッフ等から専門的な立場で教えてもらう必要があった。まずは、原点に立ち戻り、「なぜそれを行うのか」という理由を含めた「施設独自のマニュアル」を作成し、それを浸透させることにより、先輩職員の業務・介助に関する内容・知識・技術を統一させようと考えた。統一することができれば、例え、どの先輩職員が新人職員についたとしても、教える内容に違いなく、同じ内容を教えることができる。また、先輩職員間の情報共有をしやすくすることで、新人職員の業務・介助に関する理解度を確認することができる。

5.まとめ

今回の、「施設独自のマニュアル」については、今年度(平成25年度)から始動したものであり、今年度の状況を見て、来年、再来年と改善を重ね、より良いものへと発展させ、完成形を目指していく。また、萩の里2階での試行が完了した後、当法人が所有する施設全体へ波及させ、「当法人独自のマニュアル」として確立していく所存である。