BPSDを有する認知症に対する治療戦略~一老健からのチャレンジ~
第16回日本認知症ケア学会大会 (北海道)
平成27年5月23日~5月24日
タイトル:BPSDを有する認知症に対する治療戦略~一老健からのチャレンジ~
演者:大平 政人
目的
介護老人保健施設においてケアだけでは対応困難なBPSDに対し、少量の薬物治療を行うことにより、BPSDが改善することを経験した。その結果、ケア自体が軽減されADL改善にも繋がったと思われるので報告する。
方法
平成24年4月から平成26年11月までに、短期入所及び入所となった47例を対象とした。内訳はアルツハイマー型26例、脳血管性9例、前頭側頭葉変性症6例、レビー小体型認知症6例であった。いずれも入所後にBPSDの為に何らかの薬物の追加投与が必要とされた。発表に当たり47名の利用者とその家族に了解を得た。さらに、47名の利用者とその家族には、事前に少量の薬物治療の説明と同意を得ている。演者は施設長である私(医師)であり、責任を持って発表を行う。
結果
症状としては(重複症状有り)、暴言・暴力14例、極度の不穏22例、徘徊13例、帰宅欲求8例、奇声6例、易怒性5例、その他極度の不潔行為、幻視3例などがみられた。これらに対して見つめる・話す・触れるを基本としたHumanitudeに配慮したケアを行い、それでも改善がみられない場合に少量の薬物治療を行った。一方、このケアと少量の薬物治療によってADLが改善されたもの14例(30%)、維持されたもの27例(57%)であり、過鎮静のためADLが低下したものは6例であった。拘束についてはケアと少量の薬物治療によって7例が解除可能となった。また、拘束内容の軽減が1例みられ、変化なしは6例であったが全て一時的な拘束とした。
まとめ
①Humanitudeに配慮したケアに加え、少量の薬物治療によりBPSDの減少が見られた。②その結果、拘束する例も減少可能となり、介護量の軽減に繋がった。③少量薬物治療はケア困難例や、介護疲労に陥った家族の負担が軽減可能と思われた。