第25回全国老健大会(岩手)

はじめに

平成24年1月より職員たちによる自主的な勉強会『社内木鶏会』を実施している。テーマは「人間学」である。致知出版社より毎月発行されている雑誌『致知』を活用し掲載される記事を題材に感想文発表・意見交換会を行なっている。
本論では、約2年半に渡って実施してきたこの勉強会が、参加した職員にどのような意識の変化をもたらしたのかを考察していく。

目的

木鶏会の目的は大きく分けて以下の2つである。
1)職員一人一人の人生・仕事に対する意識を高め、人間力の向上を目指している。
2)組織内の交流を深め、他職種とのチームワーク向上、目標や方向性を一つにしていく。

方法

『社内木鶏会』が、参加者にどのような意識の変化・影響をもたらし人格向上に効用があるか以下の2点を通して考察した。
1)参加経験のある職員を対象に選択・記述方式のアンケートを実施した。
対象者:30名。20代~60代で職種は介護士、リハビリスタッフ、事務員など。
2)木鶏会開始前後の二年半でデイケア勤務の介護士の離職率を比較した。

結果

1)アンケート
<木鶏会に参加して良かったこと>(選択式:全11項目の中から上位5項目を挙げた)
・関わりの少ない他部署の人と意見交換ができ、親密感を感じるようになった。(66%)
・同僚が今どのようなことを考え仕事に取り組んでいるのかわかった。(56%)
・さまざまな人の生き方を知ることができた。(56%)
・それぞれのテーマを自分の仕事、生活に置き換えて考えることができるようになった。(53%)
・見方や考え方の視野が広がった。(50%)
・意見を聞くことでその人の良いことが見つけられ見方や考え方、視野が広がった(50%)
<木鶏会に参加して良かったこと>(記述式)
1.自分の信念ができ、仕事観・人生観が明確になった。
2.利他の心で行動出来るようになった。
3.木鶏会後に参加することで自分に打ち勝つ克己心がついた。
などその他多数意見あり。
2)離職率の変化
介護労働安定センターの統計によると、全国介護職員の離職率は平成24年度で17%にのぼる。当施設では木鶏会開始前2年半は半年ごと4~6人、合計24人が離職し、離職率は3.4%になっている。一方木鶏会開始後は半年間で3人離職し離職率は1.9%だったが、その後の2年間は合計2人離職するに留まり離職率は0.3%と開始前の11分の1弱にまで下がっている。
介護労働安定センターの統計によると、一番の離職理由は事業所の理念、運営の在り方の不満(24.4%)、二番は職場の人間関係の不満(23.8%)となっている。
木鶏会で施設長をはじめとした様々な職種の方との意見交換により組織内の交流が深まり、離職率の低下に繋がっていると考えられる。

考察

木鶏会開始後明らかに離職率が低下していることがわかる。記述式アンケート1.、2.、3.等からも前向きな思考になったことが伺え、それが仕事や人生に対する意識そのものを高めたと思われる。
それは、木鶏会が各界の人生の達人の生き方、考え方に触れ、自分が成すべきことや仕事に対する姿勢、考え方などを再認識する機会になっている成果とみられる。
また、木鶏会が美点凝視を徹底することで各自の自己肯定観が高まり、素直に学ぶ雰囲気が出来、職員間のコミュニケーションの場として機能し、チームワークや共通の認識が生まれ仕事をしやすい雰囲気が生まれる一端となっていると思われる。
【まとめ・今後の課題】
医療法人社団秀慈会に人間学の勉強会「社内木鶏会」を取り入れてから2年半となる。当初は主任会議へ導入し、次いで、若い職員を中心とした別の木鶏会を取り入れ以下の有用な結果を得た。
(1)木鶏会に参加することで考え方が向上し離職率が低下した。
(2)様々な職種が参加し、コミュニケーション力がアップし明るい職場となった。
(3)今後の課題として、より多くの参加者を増やす努力が必要である。