第25回全国老健大会(岩手)

はじめに

本来の老健とは病院から在宅への架け橋となる施設である。現在、多くの老健では入所者が長期化することが多く、在宅復帰率は低いのが現状であった。
1.当施設では、平成25年5月時点で在宅復帰率20.8%、ベッド回転率11%、当時入所相談員は1名であり、在宅復帰に取り組むことが困難であった。
2.しかも、重度者が58.2%と高く、在宅復帰となる利用者はわずかであった。
3.そこで、我々の老健施設ではそれを解消するために、種々の取り組みを行い、1年以内で在宅強化型へと移行できないかにチャレンジした。

目的・方法

当施設は入所定員100名。通所リハビリ定員85名。目的としては、
・1年以内の在宅強化型老健への移行。
・家族に対する在宅復帰への理解と説明。ケアマネジャーをはじめ他施設や在宅サービスとの連携。
・R4システムの導入により、多職種に対する在宅復帰への連携と意識改革。
・利用者家族のニーズに沿った在宅復帰を目指す。

結果

平成25年5月から利用者家族への説明を随時行い、ショートベッドを適切数(当施設の場合は11床)確保した。そうすることで無駄な空床ベッドをなくし、効率よく在宅復帰受入れのベッドを用意した。また、急性期病院からの受入れに関しては、元々在宅生活を営んでいた事や介護疲弊していない為、利用者・家族ともに在宅復帰へ意欲的であった。回転率が向上すれば退所時期に新規受け入れをする事が出来る為、病院側からしても入院期間の短縮ができ、紹介も増えた。病院からの受入れが増えたことで在宅復帰者も増えたが、多少の待機時間が必要となる場合、周辺の施設が一時的に受け入れて入所待ちしていただけた。
そして家族が無理なく在宅復帰できるようニーズに応じた介護・リハビリを行い、他施設や在宅サービスと連携することで家族のニーズに沿った在宅復帰支援を行う事が出来た。在宅復帰後、必要に応じて再度ショートや入所を繰り返す利用者も多くおられた。入所時に退所日の把握をする事でベッド稼働率を下げず、95%以上を保っている。
取り組んでいる最中、業務の煩雑さにより職員の負担が増えたが、各役職の協力により解消されている。
平成25年10月には在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定、同年12月には在宅復帰率50%、ベッド回転率10%を超え、平成26年6月から在宅強化型老健へと移行した。

考察

(1)在宅復帰を行うためには、利用者と家族、施設内スタッフ、周辺の病院や介護事業所の3点の理解と協力を得ることが必須である。
(2)在宅復帰後もケアマネジャーと連携を取り、利用者の状況や家族の介護負担軽減を話し合いながら訪問診療や在宅介護サービス等を提案し続けていく事が必要。
(3)家族に対する介護指導を重点的に行い、退所後も在宅生活を支援し、かつ担当者会議等でコミュニケーションを取ることが必要。