第21回日本介護福祉学会(熊本)

1.目的

最初に、当法人は、デイケア、デイサービス(2施設)、入所施設、医療型療養病床、障害者施設を所有する法人である。ここで述べる入所施設(萩の里)は、2階に58名の入所一般棟、3階に42名の認知症棟がある。
萩の里は、開設13年目の施設であるが、新人職員のための、萩の里独自の介護や業務、施設設備に対しての統一された教育マニュアルというものが存在していなかった。そのため、以下のような問題点が取り上げられていた。
1)シフトの関係で同じ職員が教えることが難しく、日によって教える職員が変わり、職員によって、業務の教え方、教える内容に違いがあり、新人職員が戸惑ってしまう
2)職員により、業務内容・知識・技術に違いがあるために、新人職員の理解度を共有できない
以上の問題点を改善するために、統一された「施設独自のマニュアル」を作成する経緯に至った。
「施設独自のマニュアル」作成をきっかけに、第一目標として、萩の里2階で「施設独自のマニュアル」を実施、統一事項とし、業務イメージの共有化を図る。そして、最終目標として、当法人の関連施設全体で「施設独自のマニュアル」を実施し、関連施設間や他部署間での職員ヘルプや異動をしやすくすることを目的とする。

2.方法

問題点を解決する方法として、プリセプター制度を実施したが、13年という月日が経っていたために、個々の業務の内容・知識・技術に違いがあったために、同じ業務であっても複数のやり方が存在し、業務イメージを統一化することができなかった。
それを踏まえ、萩の里2階のすべての業務について、まずは従来の業務のやり方を洗い出し、業務の改善を行った。従来の方法で良い業務と改善が必要な業務のどちらにおいても、新たに業務内容マニュアルを作成し、配布し、このマニュアルを統一事項とすることで、2階全職員の業務イメージの統一化を図った。
また、施設独自の業務(利用者様の送迎など)については、「なぜそれを行うか」を理由付し、明確化を行った。理由付し、明確化することが例え外部(学生実習など)から質問をされても、個々の見解の違いなく答えることができ、施設独自に行っている業務でも、誰に指摘されても正しいと言える理由があることで、自信を持って業務を行うことが可能になる。

3.結果

「施設独自のマニュアル」は平成25年度より実施しており、現段階で得られた結果は以下の通りである。
○2年目職員に関して
今まで曖昧に覚えていたことを、「なぜそれを行うか」を理由付し、明確化をしたことによって、業務の自信に繋がったように思われる。2年目職員であるが、新人職員を自信持って教える姿が見られるようになった。また、新人職員を教えることにより、自分自身のスキルアップに繋がっているように感じる。
○1年目の(介護経験のない)新人職員に関して
業務の内容・知識・技術に違いなく教えてもらえましたと意見をもらえた。また、「なぜそれを行うのか」の理由を教えていたことにより、1年目職員に関わらず学生実習で学生に教えることができるという意外な効果も見られた。
○3年目以上の職員に関して
体位交換や移乗などの介護技術においては、すべてがまったく同じというわけにはいかないが、「なぜそれを行うのか」という理由を個々に説明することができ、違いが生じるものについても、なぜ違いが生じるのかの理由を説明できるようになった。

4.考察

「施設独自のマニュアル」を実施して7月現在で3ヶ月ではあるが、目に見える形で効果は出ていると考えられる。萩の里2階で「施設独自のマニュアル」が成功し、2階全職員の業務イメージの共有化が可能となれば、萩の里全体、そして関連施設全体のでイメージの共有化