平成27年度 認知症ケア学会(東海・北陸ブロック)

タイトル:認知症治療の明るい未来に向けて~少量薬物療法×在宅強化型老健×感謝より導かれる結果~
筆頭演者:医療法人社団 秀慈会 萩の里 池野 晶子
共同演者:田村浩臣、大平政人、萩原秀男

 

目的

今後の日本を支える為には、地域包括ケアシステムの中核施設となりうる老健の対応が重要になると考える。当施設は認知症患者に対し、少量薬物療法と場としての在宅強化型老健と患者家族からの感謝の言葉をかけ合わせた方程式から、現在認知症にまつわる諸問題を解決する方法を見出したので報告する。

 

方法

方程式で得られた事を分析して、以前の現場と今の現場の違いを比較する。またオレンジプランを実行して、今後老健がいかに重要になるかを検討する。

 

結果

少量薬物療法において

少量薬物療法は薬物50%・現場の力50%が中心であり、この基盤が多くのメリットを生んできた。現場の力だけではBPSDを消失させる事は困難である。そこで少量薬物量法が必要となる。少量薬物療法の効果はBPSDを抑えるだけでなく、家族のモチベーションの向上に繋がる。強いBPSDが軽減した事により、介護を行いやすくなっているので、家族から精神的・身体的ストレスが大幅に軽減したと喜びの声が上がっている。

 

在宅強化型老健において

老健と言う場は他職種が居る為、BPSDを色々な方向からみる事が出来る。ここで重要になる事は老健と言う場は家族にとって安心をもたらす所というイメージの構築である。在宅復帰に繋がる大きな要因はその施設のクオリティである。家族は見た目で施設を選んで来ているのではなく、場を第一に考えて来ている。他職種がそこにいるからこそ、在宅復帰させる事が出来、家族が安心しリピーターになる。つまり家族に笑顔が増え、病棟のイメージが明るくなる。これが出来るのは老健という場だからである。

 

感謝において

感謝は私たちのエネルギーである。感謝をされる事で人間の脳細胞の中のスピンドルニューロンが効果を発揮する。この細胞は他から感謝されることで、自身をプラス思考にさせる。感謝をする事で他に幸せを分け、感謝をされる事で自身に幸せを得る。つまり感謝とは人を不幸にさせるような要素は一つもなく、喜びを与える。たった一言の言葉だが、この言葉ほど愛のある言葉は存在しない。

 

 

以上の事から、老健は少量薬物療法を行うにおいて最適な施設であると同時に、在宅強化型老健は他職種が連携する事により、安心した在宅生活の場を作る事が出来る。さらに感謝をして頂く事。これらにより、思い掛けない効果が出た。

1 職員全体が認知症についての医学的知識が増えスキルアップした。

2 二年前から認知症棟でバーンアウトによる退職者が出ていない。

3 家族の訪問が増え、認知症棟のイメージが変わり明るくなった。

4 少量薬物療法で患者のADLとQOLが上がった。

5 患者・家族・職員から笑顔が溢れた。

 

考察

新オレンジプランが発表され、認知症への対応が迫られている。在宅強化型老健は、家族や地域社会との距離が縮まり、認知症の理解を深められる取組を行える。また、急性期などでは難しい認知症患者への対応も、老健では医療介護職によって問題なく適切なサービス提供を行える。又、緊急時の入所などの支援も行える。今後認知症に対応できる老健が少しでも増えれば、認知症患者や家族が思い悩むことなく、安心して過ごせる地域社会を構築できる。新オレンジプランに全て対応できるのはこの方程式である。