より良い看取りを目指して
第28回 全国介護老人保健施設大会 愛媛 in 松山
タイトル:より良い看取りを目指して
筆頭演者:医療法人社団 秀慈会 萩の里 大平政人
共同演者:萩原秀男
より良い看取りとはどうあるべきか。この答に己自身長く悩んできた。地域において信頼される老健施設であるためにできる範囲で答えていく必要がある。入所中に肺炎、心不全など緊急時疾患を呈しても極力我々の施設で対応を行っている。一方で長期療養によりADLが低下し終末期になった場合は、看取りが必要となってくる。そこで我々は最近3年間に経験した80例の看取りを詳細に検討し、今後どうあるべきであるかを検討したので報告する。
【対象及び方法】
H26年1月からH28年12月まで当施設で入所となり亡くなった80名のうち家族の看取りの確認ができ、かつターミナルケアプランが可能であった66例を対象とした。他の14例は急変の為きちんとした看取りの手順が踏めず除外した。年度別に看取り期間(日)、入所より死亡までの期間(月)、輸液の有無と量、更にO2投与や抗生剤の投与などについても検証した。疾患は多くは認知症があり嚥下機能障害を合併し急性呼吸不全や心不全などにて状態の悪化例も見られた。年齢は、H26年度、男性(n=3)85.6±8.7歳、女性(n=19)89.8±4.3歳、H27年度、男性(n=6)86±4.6歳、女性(n=20)89.6歳±6.5歳、H28年度、男性(n=6)86.3±5.8歳、女性(n=13)94.2±4.9歳、(M±SD)と女性の方が若干高齢であった。説明と同意いわゆるムンテラの回数は(1)H26年度1.5±0.5回、(2)H27年度1.6±0.8回、(3)H28年度1.6±0.8回であった。また、経管栄養の占める割 合は(1)9%、(2)20%、(3)21%であった。
【結果】
1)看取り期間 (1)H26年度14.2±1,7日、(2)H27年度12.0±11,8日、(3)H28年度12.6±7.9日と約2週間前後であった。
2)死亡までの期間(月=M)
(1)H26年度47.2±45M、(2)H27年度35.2±33.9M、(3)H28年度42.3±49.6Mであり、3~4年と長く長期入所も多いためSD値の幅が大きかった。
3)処置について
*酸素投与:H26年度9%(2/22例)、H27年度72%(18/25例)、H28年度42%(8/19例)と、H27、28年度でO2使用率が高かった。*抗生剤投与について:H26年度41%、H27年度40%、H28年度30%といずれも30~40%の使用率であった。看取りであっても初期には誤嚥性肺炎を生じ、抗生剤投与を投与せざるを得ない状況があった。
*輸液の使用:多くの症例に輸液は行っている。H26年度1000ml以上/日が13例、1000ml以上から500ml/日に減量が1例、500ml/日が6例、全く投与しなかったものが2例であった。H27年度:1000ml以上/日が7例、1000ml以上から500ml/日が5例、500ml/日が12例、投与なしが1例であった。H28年度:100ml以上/日が3例、500ml/日が1例で、うち200mlに減量したものが4例であった。また1000mlから500ml/日に減量は3例、200mlに減量は2例であった。ここ1年半は状況によって(家族にも同意を得て)徐々に減量していく傾向にある。
【考察】
看取りにおけるガイドラインは老健協会から出ているが、実際には問題点が多々ある事に気づく。入所時に看取りの方針であっても、誤嚥性肺炎を生じたり心不全を生じた場合全く治療を望まないのではなく、ある程度治療を行いそのうえで改善が見込めない場合ようやくキーパーソンを含めた家族が看取りを同意するのである。こういうケースを我々は準看取りと呼ぶ場合も多い。要は、入所者と家族の気持ちを尊重したプランを多職種協働で考え、個々に合ったターミナルケアプランを考えることが重要と考える。つまりベストな看取りは困難であるが、ベストになるよう努力し続ける必要があるのではないだろうか。また、最近とみに思う事であるが輸液を多く投与したり、それを続けていく事が良い事か葛藤している状態である。報告によると、輸液を行うと痰の量が増加し、エンドルフィンが低下するとの報告もあり今後の課題である。
【まとめ】
最近3年間で亡くなった80例のうち看取りの承諾とケアプランが行えた66例の検討を行った。
(1)多くのケースは認知症があり、嚥下機能低下によるものであった。
(2)説明と同意(いわゆるムンテラ)は、1~2回であり亡くなるまでは2週間位であった。
(3)処置としてO2投与、抗生剤及び輸液が行われたが、最近輸液の量は減少傾向にあった。
(4)看取りの中には治療を行った後にターミナルケアとなる準看取りのケースもあり、全てがマニュアル通りにいかないと考える。
(5)ベストの看取りは困難であるがベストに近づくように努力し続ける必要があると考える。