第28回 全国介護老人保健施設大会 愛媛 in 松山

 

タイトル:介護職員が行う生活リハビリから見えてきたもの
筆頭演者:医療法人社団 秀慈会 萩の里 一杉真司
共同演者:田村浩臣 小島功大 原木加奈 大平政人 萩原秀男

 

 

【目的】

現代では介護老人保健施設とは在宅に帰る為の練習の場と言われている。しかし多くの方々は老健という存在を間違えて認識している。入所して人生の終末期を迎える場ではなく、在宅にて最後を迎える様に支援するのが老健の役目である。そこで私たちは、在宅に帰る為に入所者に対して何か出来る事はないか考えてきた。そこで生まれたのが、介護職員が行うリハビリである。当法人を利用して下さる家族の多くは起居動作・トイレ動作が軽介助のレベルまで上がれば在宅で共に過ごしたいと言って下さっていた。しかし介護職員の現状はリハビリに対しての専門的な知識が備わっていない為、どのように介入をすればよいか理解していなかった。初期過程としてリハビリと専門的知識の共有を図り、介護独自のリハビリを生み出した。

 

 

【方法】

1)リハビリ職員と協力し生活目標シートを作成した。
2)ADLを維持する為には、筋力の維持が大切である。その為、食事が出来る利用者全てを車椅子から椅子に変えて立ち上がる機会を多くした。その中でADLが大幅にアップする見込みのある利用者をピックアップして、個別リハビリを行った。
3)集団体操を毎日行い、体を動かす機会を増加させた。

 

 

【結果1】

1.生活目標シートを作成したことで、利用者が目標を持ってリハビリを行う事が出来る様になった。目標とは老若男女問わず、個人個人のモチベーションややる気に繋がる。又、職員の目標にも繋がった。利用者が私たちに何を求めているか、目に見えて分かる事で、一つ上の介護を行う事が出来た。今までの介護士は利用者に対しての介助を区別できていなかったが、次第に個々のレベルに合わせた介助が出来る様になっていった。

2.車椅子は移動する為だけの道具という事を多くの職員・利用者は理解していなかった。その為、席で談話中であっても利用者は車イスに座っていた。この行為は利用者のADLの低下に繋がると考えた。日々の生活の中で、椅子に腰を掛けるという事は当たり前の事である。そこで生まれたのが車椅子で食事をしないという事である。移動時以外は椅子にて生活する事の徹底をした。車椅子から椅子に変えたことで立ち上がる機会が格段に増えた。それはリハビリでいうと立ち上がり訓練を常時しているのと同じである。リハビリ職員が行うリハビリとフロアーで介護職員が行うリハビリを行った結果、立ち上がりの基本動作が確立されてきた。そのことにより排泄動作・移乗動作の介助量が軽減され、ADLの維持・向上に繋がった。

3.私たちの行う集団体操は至って単純である。色々な種類の体操を入れ込んだ物ではなく、立ち上がりの練習をひたすら行う物とされている。机に手をついて皆で立ち上がる。立ち上がりが困難な方に対しては、スタッフが臀部を支えて何としても立って頂く。立ち上がりが困難な方でも、日々この体操を繰り返すことで、徐々にスムーズに立てる様になる。

 

 

【結果2】

結果1の内容に沿って日々リハビリを実施する事で、利用者のADLは変化していく。目的にもあるように家族はADLのアップを望んでおり、介助負担が少なければ在宅で一緒に暮らしたいという希望がある。老健は家に帰る練習の場と掲げている通り、私たちは家族の負担・利用者の負担が軽減するように三カ月という期間で行う。現段階で在宅復帰率は50%以上をキープしており、家族・利用者の気持ちの貢献が出来ていると思う。

 

 

【考察】

施設生活というのは、利用者・家族が休憩するためにあるのではない。日々休憩する事が当たり前の様な生活になっていれば、ADLは低下する一方である。意識的に運動する事を取り入れていく事により、今まで有効活用できていなかった時間の一部を利用することが出来た。そのことにより低下するADLを維持・向上する事に繋げる事が出来た。今後は立ち上り訓練だけではなく、レクリエーションで家での生活に必要な動作を取り入れ、より在宅復帰に繋がるように努めていく。これが老健のあるべき姿ではないか。